ゆっくりと、意識を揺らす。
これは、ゆめ。
ゆめ。

大きな手が、僕を、優しく撫でる。
ゴツゴツとした、キレイではない手
男の人の手、と言い切るにも硬い手
これはマメっていうんだよね、と前に聞いたら
そうだ、と短く答えて笑ってくれた。


やさしい、ぼくの、おじいちゃん。

「じいちゃ、なに、してる？」
「ああ、何やら工房というものを借りてみたのでな
　早速使ってみたのだが……」
「？」
「そぉい！！！」
「！？」
「…と、やったら壊れてしまったのだ……
　どうすれば、良いかのう…」
「じいちゃ、むいてない」
「………」
「ないない。」
「…………手厳しいな、我が孫は…」

こん、こん、こん
仕方なく木槌で鋼を打つ。打つ。
老人の膝には、薄汚れた子供。
子供はぎこちなく、老人は大らかに、笑う。
ずっと続けば良いと思っていた
誰かの、夢。



目が覚めて、目を伝う雫に気付く。
ちがう、ぼくは、ぬいぐるみに戻ったんだ
ちがう、あんなやさしいひと、しらない。
あれはきっと、おでんのおじいちゃん
ちがう、わかってる
手が違う。全然、違う。
かえってこない。
かえって、こない。